研究概要 |
(1)抗CEA・抗CD3バイスペシフィック抗体(OH1)のin vitroでの細胞障害活性誘導. CEA陽性胃癌培養株KATOIIIに対するCD3陽性リンパ球の細胞障害活性のtime dependencyを検討した.E/T=100/1で時間経過を見た結果,培養3,6,10,20時間でOH1処理群が11.6%,19.1%,21.9%,42.8%で,非処理群が8.2%,9.2%,14.2%,37.6%とOH1処理群が非処理群に比べて高い障害活性を示した.ただし時間の経過にしたがってOH1処理群と非処理群の差は縮小傾向を示した.このことは長時間培養の場合,OH1の障害活性増強作用のメカニズムのなかで,抗CD3抗体部分によるCD3陽性細胞の活性化作用が重要な意味をもっていることを示唆した. (2)患者血清によるOH1のCEA陽性細胞に対するbinding inhibitionの検討. 高CEA患者血清を用いOH1のKATOIIIに対する結合能の抑制効果をFlowcytometryで検討した結果,患者血清中のCEAはOH1の結合能に全く影響を及ぼさないことが示された. (3)SCIDマウスにおけるOH1の抗腫瘍効果の検討. SCIDマウス腹腔内にKATOIIIを3×10^6個投与し,24時間後にOH1処理および非処理PBMCを3×10^8個腹腔内投与し,生存時間の延長効果を検討した.その結果,OH1処理群の平均生存日数は90日で,非処理群の77日と比較し生存延長効果を認めたが有意の差とはならなっかた.これに対しては移植前のnatural killer活性の失活と移植癌細胞の増加とが必要と考えられた.
|