本研究では異種臓器移植で超急性拒絶反応が発現する事が明らかにされているモルモットからラットへの実験系を用い異種膵ラ氏島移植に於ける拒絶反応の解析を行った。 (方法及び結果) 1。モルモット膵臓よりの膵ラ氏島単離法の開発 従来、モルモット膵臓より移植のドナーに供する程の大量膵ラ氏島単離に関する報告はなく、今回新たな単離法を考案した。すなわち、モルモット膵臓の解剖を詳細に検討し、膵頭部で主膵管を露出、体尾部にカニューラを留置、コラゲナーゼ消化静置法で単離した。光顕、電顕的検索で内分泌細胞であることを確認した。 2。ラ氏島移植、及びグラフトの免疫組織学的検索 単離モルモット膵ラ氏島500個をラット(Lewis)の経門脈的肝内または腎被膜下に移植した。経時的にレシピエントを犠牲死させ、グラフトを組織学的に検索した。肝内移植後24時間では、軽度のCD4陽性細胞を主体とした細胞浸潤が認められたがグラフトは正常な形態を保っていた。移植後48時間では、CD4、CD8陽性細胞、マクロファージ、B細胞の浸潤が著明となり、72時間までに、グラフトは破壊された。これに対し、腎被膜下移植では24時間後では局所の出血、フィブリン沈着が著明で72時間後では顆粒球、CD4陽性細胞を主とした細胞浸潤を認めた。移植後5日目にはグラフトは破壊された。 以上、モルモットからラットへの異種ラ氏島移植では超急性拒絶反応が発現しない事が明らかとなった。さらに、肝内移植と腎被膜下移植では異なった異種拒絶反応の機序が存在することが示唆された。補体制御膜因子の本実験系に於ける拒絶反応への関与については現在検討中である。
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