研究課題/領域番号 |
07671349
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
外科学一般
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研究機関 | 愛知県がんセンター |
研究代表者 |
成田 達彦 愛知県がんセンター, 病理学第二部, 主任研究員 (40270714)
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研究分担者 |
高木 弘 名古屋大学, 医学部・外科学第二講座, 教授 (70154755)
神奈木 玲児 愛知県がんセンター, 病理学第二部, 部長 (80161389)
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研究期間 (年度) |
1995 – 1997
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キーワード | 乳癌 / 細胞接着分子 / 糖鎖抗原 / E-セレクチン |
研究概要 |
乳癌細胞における糖鎖抗原の細胞生物学的機能を解析し、これを臨床材料を用いて検証した。乳癌細胞では高率にシリアルLewisX抗原(sLeX)が発現しており、接着実験の結果から血管内皮細胞との接着においてE-セレクチンのリガンドとして機能していることが判明した。この乳癌細胞のsLeXの合成に最も重要な糖転移酵素はFucosyl-transferaseVI(Fuc-TVI)と考えられた。乳癌細胞は直接および宿主のリンパ球からIL-βなどの炎症性サイトカインを放出させ、血管内皮のE-セレクチンの発現を誘導した。この反応はステロイドで抑制された。乳癌細胞に血管内皮で産生されるサイトカインであるHB-EGFやHGFを作用させるとインテグリンの発現が増強し、細胞外マトリックスへの接着性や浸潤性も亢進した。同様の変化は癌細胞と血管内皮細胞を共培養しても認められ、これは糖鎖-E-セレクチンを介する接着に続く第二段階の接着と考えられた。臨床材料を用いた検討では、乳癌組織において、E-セレクチンは腫瘍近傍の血管内皮に眼局して発現していた。進行再発症例の血清E-セレクチンsleX濃度やHGF濃度は上昇していた。組織抽出液中のsLeX濃度は、癌部では非癌部に比して上昇しており、Fuc-TVI遺伝子の発現との相関が認められた。乳癌症例において、組織sLeX陽性例の予後は陰性例に比して有意に不良であった。以上より、乳癌細胞の血管内皮への接着から血管外脱出に至る分子機構が解明できた。また、その過程に関与する様々な細胞接着分子は、腫瘍マーカーや予後予測因子として臨床的に有用と考えられた。
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