研究概要 |
平成7年度 間接蛍光抗体法:抗CD59抗体に対してもMKN-28,MKN-45,KATO-III,MKN-74の各細胞膜に蛍光を認め陽性細胞率はそれぞれ90%,80%,50%,15%であった.抗CD59抗体を用いた免疫組織化学染色:胃癌46例の切除標本を抗CD59抗体を用いて免疫組織化学染色した結果,CD59陽性例は28例,60.9%であった.組織型別にCD59陽性例をみると,分化型癌と低分化腺癌と二型に分類すると,CD59の発現率は分化型癌で27例中15例55.6%,未分化型癌で19例中13例68.4%と,未分化型癌でやや発現率が高かった.CD59発現率はstage IとIIの早期群とstage IIIとIVの進行群を比較するとCD59発現率はそれぞれ42.9%,83.3%であり,進行群で有意に高かった(p<0.02).深達度ではsmまでと比較して有意差はないものの深達度が増すにつれCD59発現率は高率となった.リンパ節転移では,転移なし群のCD59発現率は45.8%,転移あり群は72.7%であり,リンパ節転移あり群で有意差はないが発現率は高かった.非癌健常部胃粘膜のCD59の発現をみると粘膜上皮にはCD59の発現は認めなかったが,粘膜,リンパ濾胞のリンパ球の一部では発現していた.Northern blot hybridization:CD59は3本のバンドにハイブリダイズされた.CD59 mRNAは検索した胃癌細胞株全てに検出されたが,MKN-74では他のMKN-28,MKN-45,KATO-IIIと比較してやや発現レベルが低かった.また胃癌組織では健常部胃粘膜組織よりも強い発現がみられた.CD59が発現しているとされるリンパ球でも当然のことながらCD59の発現がみられた. 平成8年度 胃癌細胞ならびに胃癌組織における補体制御因子CD59,MCP,DAFの発現.1)継代培養細胞ならびに手術時得られた正常胃粘膜および癌組織をトリプシン処理し遊離細胞を対象とした.各細胞1×10^5個を抗CD59rat monoclonal抗体(YTH53.1 SEROTEC),抗MCP抗体(14-48SEROTEC),抗DAF抗体(BRIC110 SEROTEC)で免疫染色し,蛍光顕微鏡で観察,撮影した.コントロールとして二次抗体の血清を用いることと,すでに確立されている胃癌細胞株MKN28,MKN45,MKN74,KATOIIIを同時に染色した.2)CD59,MCP,DAFが胃癌においてどのように分布しているか,これを各モノクローナル抗体およびRT-PCR手法を用いて,当科の継代培養胃癌細胞株と正常胃粘膜と胃癌における染色性を観察し分布を明らかにした. CD59変異遺伝子の作製は継続中であるが,完成にはいたらなかった.
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