1.マウス肝転移モデル:マウス大腸癌Colon26細胞の同系マウス門脈内投与により肝転移形成モデルが作成された。Colon26がCD44を強く発現し、抗CD44抗体がColon26細胞の肝転移形成を抑制したことから、CD44が転移形成に関与することが示された。 2.生体蛍光顕微鏡によるヒト大腸癌細胞の肝生着初期像の観察:ヌードマウス脾内に投与したヒト大腸癌細胞は肝のzone-1類洞に捕捉された。90%以上の癌細胞は類洞内で24時間以内にviabilityを失い、投与24時間後の癌細胞の肝内残留率が肝転移形成率と相関することが判明した。ヒト大腸癌細胞は径が15μm以上であるが肝類洞径は8μm前後と小さく、肝に流入した癌細胞が類洞内で著しく変形することが観察され、この変形が癌細胞のviabilityを低下させる可能性が示唆された。以上の結果を論文としてClinical and Experimental Metastasis誌に投稿し、既に採用されており、現在掲載準備中である。 3.大腸癌患者血中遊離癌細胞の同定:大腸癌患者の腫瘍流出血中に癌細胞が遊離することをRT-PCR法で確認した。この結果が術後肝転移再発を予測し得るか否かを観察中である。 今後の計画:大腸癌肝転移巣は通常hypovascularであり、動注化学療法が奏効し難い。一方、大腸癌細胞は血管新生を誘導するvascular endothelial growth factor(VGF)等を産生することが報告されている。肝転移形成初期における血管新生の機序を検討する予定である。
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