研究概要 |
1.生体蛍光顕微鏡によるヒト大腸癌細胞の肝生着初期像の観察:ヌードマウス脾内に投与したヒト大腸癌細胞は肝のzone-1類洞に捕捉された。90%以上の癌細胞は類洞内で24時間以内にviabilityを失い、投与24時間後の癌細胞の肝内残留率が肝転移形成率と相関することが判明した。ヒト大腸癌細胞は径が15μm以上であるが肝類洞径は8μm前後と小さく、肝に流入した癌細胞が類洞内で著しく変形することが観察され、この変形が癌細胞のviabilityを低下させる可能性が示唆された(Clinical and Experimental Metastasis 14 : 153-164, 1996)。 2.大腸癌患者血中遊離癌細胞の同定:大腸癌患者の腫瘍流出血中に癌細胞が遊離することをRT-PCR法で確認した。この結果が術後肝転移再発を予測し得るか否かを観察中である。 3.マウス大腸癌肝転移モデル:マウス大腸癌Colon26細胞の同系マウス門脈内投与により肝転移形成モデルを作成した。Colon26が細胞接着分子CD44を強く発現し、抗CD44抗体がColon26細胞の肝転移形成を抑制したことから、CD44が転移形成に関与することが示された。 4.ヒト大腸癌細胞へのCD44遺伝子の導入:癌細胞の転移形成に関与することが示唆されているCD44分子の複数のvariantをcloningし、CD44陰性ヒト大腸癌に導入してCD44陽性細胞株を樹立した。このうちCD44v3-10導入癌細胞はヒアルロン酸に接着し、in vivoの増殖は有意に抑制された(Surgical Forum 47 : 510-512, 1996)。
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