研究概要 |
低酸素暴露時の急性胃粘膜病変発生における脂質過酸化反応の関与について検討することを目的に,以下の実験を行った. 200g前後のSD雄性ラットを無処置群(N群),room air下の単拘束群(C群)及び低酸素拘束群(Hx群)に分けた.C群は1時間および3時間拘束を行った.Hx群はチャンバー内を5%低酸素混合ガスで潅流し1時間(Hx1)および3時間(Hx3)拘束を行った.拘束終了後,エーテル麻酔下に開腹,胃を採取し,粘膜のホモジネートからクロロホルム・メタノール溶液にて脂質を抽出しCL-HPLC法にて粘膜内PCOOHを測定した. その結果,単拘束のみではN群に比べPCOOHの著明な上昇は見られなかった.Hx1群,Hx3ともにN群に比べPCOOHは高値を示し,また,Hx3群はHx1群より高値を示した. 同様のモデルでTBA反応物質を脂質過酸化の指標として測定した我々の結果ではC群,Hx群で上昇がみられPCOOHの変化とは異なる傾向を示した. PCOOH, TBA反応物質いずれも脂質過酸化にともなう現象を反映しているが前者が脂質過酸化物を直接定量しているのに対し後者はその2次生成物をも含めて測定しているため,その測定上の意義は異なりPCOOHはより鋭敏に変化するものと考えられる. 今回の検討により胃粘膜PCの過酸化は低酸素条件下においてより高度に起きているものと考えられた.
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