研究概要 |
肝臓外科においては担癌区域の十分な肝切除を行うことが理想である。効果的な残存肝の再生を促進する方法があれば十分な肝切除による根治的な治療を行なうことが可能になる。近年、肝細胞の増殖を調節する様々な増殖因子の実体が明らかになり、これら増殖因子の作用により肝細胞の増殖を促進させようとい試みに期待がかけられている。我々はアクチビンAという分化誘導因子が肝細胞においてオートクリン増殖抑制因子として機能していることを明らかにしてきた。そのアクチビンAに特異的に結合しその作用を完全に消失させるフォリスタチンと呼ばれる蛋白質が存在する。従って、フォリスタチンを用いることにより肝細胞の増殖を促進させることが可能になると予想される。 我々はフォリスタチンを用いた新たな肝再生法を確立するためにin vitroのモデルにおいて1)フォリスタチンの有効な投与法を確立する、2)有効な投与量を決定するという研究目的を立てて実験を行った。その結果、70%肝切除ラットモデルでは1μgのリコンビナントフォリスタチンを門脈内に一回投与しただけでDNA合成開始時期が6時間早まり、肝再生が有意に促進されることを見いだした。この成果はGastroenterology 108:1136-1142,1995)で報告した。更に、[^<125>I]Follistatin 1 μgを末梢静脈から投与すると、フォリスタチンは特異的に肝臓に集積し、この肝内集積が72時間持続することを見いだした。従って、最初に投与してから72時間後に追加投与しフォリスタチンが肝内に持続的に集積している状態を作成することにより肝再生が有為に促進されることを確認した。この成果はHepatology[24(2):361-366,1996]で報告した。 以上、フォリスタチンを用いた新しい肝再生法の確立の研究おける当初の目的に対しほぼ、計画どおりの成果を得ることができた。
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