研究概要 |
[目的]閉塞性黄疸(閉黄)を伴う肝胆道疾患に対する拡大肝切除後には肝不全を合併することが多く,その対策は急務である。今回,その病態を明らかにすべく特に好中球に注目し基礎的検討を行った。[方法]Wistar系雄性ラットを用い,14日間閉黄5日間減黄後約78%肝切除を施行した。閉黄後,減黄後,及び肝切除後12・24・48・72時間の各時相で血清Alanine aminotrans-ferase(ALT),Purine nucleoside phospholylase(PNP),ラットInterleukin-8 familyの一つであるCytokine-induced neutrophil chemoattractant(CINC)を測定,同時点で類洞内に集積した好中球数を組織学的に計測,さらに免疫組織学的に類洞内皮細胞上のIntercellular adhesion molecule-1(ICAM-1)の発現を検討した。また,抗好中球抗体を肝切除時及びその24時間後に腹腔内投与し,肝切除後48時間目の障害抑制効果につき検討した。[結果]閉黄時CINCは上昇,好中球の肝への集積も認められた。減黄後それらは低下するものの依然高値を示した。しかし,ALTと,肝類洞内皮細胞障害の指標と考えられるPNP/ALTは有意な変動は示さず,ICAM-1の発現増強も見られなかった。肝切除後にはCINCは早期に強い上昇,肝内集積好中球数の増加も観察された。ICAM-1は肝切除後24-48時間をピークに発現増強し,それと一致するようにPNP/ALTの上昇が認められた。抗好中球抗体によりPNP/ALTの上昇は有意に抑制され,生存率の改善を認めた。[結論]閉黄肝の肝切除後には好中球集積による肝類洞内皮細胞障害が惹起され,その結果肝不全発生へと進展していく可能性が強く示唆された。
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