研究概要 |
平成7年度は,ボンベシンの大腸粘膜増殖作用に注目し,大腸injuryモデル特に実験大腸炎を作成しボンベシンが傷害治癒を促進するかどうかについて研究を進めたきた.実験大腸炎モデルとして,下行結腸に2連銃式の人工肛門を作成後,空置した肛門側の直腸を4%酢酸に暴露させることにより大腸炎を惹起させた.手技がやや煩雑なためこの方法を用いた報告例は極めて少ないが,我々は実験ラットの安定した生存率を得ている.本法の最大の利点は直腸が完全に空置されているために便などのluminal factorの影響を無視できることである.実験的に大腸炎を生じさせた直腸を摘出後,病理組織学的にulceration,mecus celldepletion,crypt abscess,inflammatory cyst,mucosal atrophy,edema,inflammatory cell infiltration,vascular dilatationの8項目について検討し,これらをスコア化し大腸炎の程度を評価した.これまでに我々は上行結腸,下行結腸においてボンベシンの大腸粘膜増殖作用を明らかにしてきたが,直腸でも同様にBromodeoxyuridineの取り込みがボンベシンによって用量依存性に促進されることが明らかとなった.即ち,ボンベシン3ug/kgでは効果が認められなかったが,10,30ug/kgの用量では有意にBromodeoxyuridineの直腸粘膜への取り込みが増加した.そこで上記実験大腸炎モデルを作成し,ボンベシンの効果を検討した.ボンベシン用量10,30ug/kg,3回/日,4日間投与では有意に前述の大腸炎スコアが対照群と比較して減少したが,3ug/kgでは十分な効果は認められなかった.以上によりボンベシンにより直腸粘膜の傷害治癒が促進されることが明らかとなった.
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