小児消化器外科領域で直腸肛門疾患の頻度は高く、この術後排便機能をより客観的に評価することは重要である。従来の肛門内圧検査上では似たような内圧所見を示しながら排便機能が異なることも稀ではなかった。そこで排便と中枢神経系との関連に注目し肛門管ないし直腸で刺激を行い大脳及び腰部及び仙骨部での誘発電位を導出記録し定量的に排便機能と関連のある指標が得られるかどうか検討することとした。本年度は先ず肛門部及び直腸での有効な刺激が可能なように刺激バルーン及び刺激電極の作製を独自に行い、より、正確な誘発電位の記録が出来ることを目標とした。先ずバルーン刺激が可能かどうか各種バルーンを試作し刺激を行ってみたがバルーンをデジタル的にコントロールすることが難しく今回の測定系には有用でないと判断し、刺激のタイミングやそのオンオフの正確な電気刺激を用いることとした。肛門管をしっかりと捉えるのみならず直腸末端部にしっかりとフィットする独自の電極を過去の直腸肛門内圧検査や注腸所見を参考に各種作製した。更に刺激の方向性と誘発電位の差を検討するため肛門管部と直腸末端部に各々4方向に電極を張り付けることとした。初期の測定はまず意志表示の明瞭な年長児に行うこととし成人における欧米での報告例を参考に刺激条件や誘発電位導出電極等の検討を繰り返し行い再現性のある誘発電位を記録することがほぼ可能となった。失禁等の排便機能障害を有する高位鎖肛術後例では再現性のある誘発電位が認められにくかったりする傾向が認められた。
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