小児外科領域で直腸肛門奇形は代表的疾患である。その術後排便機能は様々でより客観的に評価検討することが術後遠隔期でのQOL向上につながる。昨年来、中枢神経系との関連も考慮に入れ従来の直腸肛門内圧検査では評価し得ないより客観的な直腸肛門機能を検討すべく直腸肛門管由来の誘発電位を導出記録検討を開始した。本研究でまず問題となるのは直腸肛門部刺激装置の作成である。昨年度はバルーン刺激は中枢神経がらみの測定系には無効であることが判明し、それに代わる電気刺激装置として刺激電曲の作製を試み直腸肛門奇形術後例数例で測定し誘発電位を記録することが可能となった。本年度は刺激電極をこけし状で肛門管及び直腸末端に密着するよう企画立案し、こけし状の頚部4方向に肛門部刺激電極を装着し、こけし状頭部下部の肛門刺激電極より45度ずらした4方向に直腸末端部刺激電極を各々装着した。原則として肛門部は6時12時方向と3時9時方向の2方向で刺激することとし、直腸下部は1時7時方向と4時10時方向の2方向で刺激した。測定対象は直腸肛門奇形術後例のうち意志表示可能な7歳以上の患児とした。肛門部刺激電流閾値は個体差が大きく5〜20mAとばらつきが多かった。誘発電位はW型やV型のものが多かったがこれらに分類されないものも散見された。各々のピークまでの潜時を含めた波形の再現性は比較的排便機能の良好な患児では概ね認められたものの、肛門部括約筋の分布に異常のあると思われる排便機能不良の患児では同一刺激方向でも再現性が低く刺激方向が代わると全く誘発電位波形が異なり、その波形も不定形で肛門部刺激閾値も高値であった。直腸末端部刺激閾値も症例によってまちまちで肛門部刺激に比し波形の再現性も低かった。
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