研究概要 |
平成7年度においては、腹腔鏡下胆嚢摘出術(LC)の際の術中精査法としての術中超音波検査、術中胆道造影の有用性を比較検討した。尚、今年度の成果は欧文医学雑誌に投稿中である。1.術中胆道造影と術中超音波検査の比較:対象は、当科および関連施設にてLCが施行された79症例である。術中に超音波検査、胆道造影の両者を行った後に胆嚢摘出を施行した。胆管系・脈管系の解剖、胆管結石、等の抽出能を両検査法で比較した。また検査所要時間、検査による合併症も比較した。術中超音波検査いは、10mm径の超音波探触子(アロカ電子リニア方式LCプローブ)を使用した。術中超音波検査による各部位の抽出は、胆嚢管合流部94%、中・上部胆管99%、膵内胆管90%、乳頭部40%、固有肝動脈97%、右肝動脈96%、胆嚢動脈45%、門脈100%と良好であった。胆道系の抽出率は、同一症例において施行された胆道造影より有意に(P<0.05)高かった。胆肝結石の診断能においても胆道造影より優れていた(N.S.)。更に、術中造影に比し、検査の成功率が高い(100% vs 89%,P<0.05)、検査の所要時間が短い(10分 vs 24分,P<0.001)、胆管系だけでなく周囲脈管、肝動脈の変異、胆嚢病変(癌、ポリーブ)、等の抽出も可能であるが、等の利点もあった。2.成績の要約:LCの際の術中胆道精査法としては超音波検査が胆道造影に比し、解剖学的部位の同定・抽出能、病変(胆管結石、胆嚢病変、肝動脈の変異、等)の診断能に置いて優れており、簡便性に置いても勝っていた。更に、コスト面、X線被爆の面からも超音波検査法が優れていた。3.結論:遺残胆管結石や合併症(術中胆管・脈管損傷)の防止には、術中超音波検査の方が術中胆道造影より有用である。
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