短腸症候群をはじめとする小腸機能不全状態の治療として数年前より小腸移植が欧米で施行されるようになり、我が国でも生体小腸移植が昨年より開始された。小腸移植においては術後の拒絶反応とともに、移植操作に伴う除神経、リンパ流の遮断、虚血再灌流障害など保存時の種々の原因で生ずる下痢が頻発し、時にはこの下痢が患者管理上重要な問題となってきた。この下痢を予防する目的で臨床では小腸のみならず大腸の一部をグラフトとして移植する試みがなされているがその際の大腸の移植後の変化については不明な点が多い。我々は移植された大腸には繊毛形成が認められる例があることをすでに報告してきたが、その生理機能等詳細については不明なことが多く以下の実験を行った。ラットを用いて右側大腸を含む小腸の同系同所性移植を行い。以下の結果を得た。 (1)トライツ靭帯以下の小腸大腸移植群では移植後3ヶ月での大腸粘膜に繊毛形成は認められなかった。 (2)1/2小腸移植と大腸移植を行った群では30%に繊毛形成を認めたが、ブドウ糖、マルトースの吸収試験では大腸における吸収能は認められなかった。また大腸粘膜アルカリフォスフォターゼ活性値も認められなかった。 以上小腸大腸の移植において、移植小腸の長さが短いときに大腸の繊毛形成が促進されることが推察されたが、形成された繊毛の機能は未熟であった。
|