研究概要 |
周術期の患者における免疫能の変動を、単球の抗原提示能を反映するとされる表面抗原HLA-DRの発現率と血清IL-6,IL-8値を測定することにより検討した。 当科での手術症例、胃癌24例、食道癌7例、胆石症7例、大腸癌7例、HCC10例、良性疾患緊急手術4例、膵癌8例、胆嚢癌3例、乳癌6例を対象に術前、術後1,3,5,7,14日目の末梢血単核球をフローサイトメトリーでCD11b陽性単球のHLA-DR発現率を測定。血清IL-6,IL-8値はELISA法にて測定。結果はHLA-DR発現率(%)では胃癌は術前41.44で1日目35.15に減少、7日目には39.07に増加。食道癌は術前48.05で14日目67.99と漸増。胆石では術前38.69,7日目に65.77に漸増。大腸癌は術前43.61,1日目35.02,14日目47.42に漸増。HCC群は術前36.9,1、3日目には32.5,5日目以降49.8。緊急群は術前34.55,1日目65.77,3日目は42.04に減少。膵癌は術前44.46,1日目32.46,7日目は51.72に漸増、14日目は36.73。胆嚢癌は術前47.67,1日目27,94,3日目以降46.5。乳癌は術前22.48,7日目は46.31に漸増。IL-6(pg/ml)は術前、1日目、3日目の順に胃癌、37.2,67.38,41.48,HCC、24.35,30.19,21.5,膵癌、57.41,165.47,73.48と1日目が高値の推移をし、食道、51.77,48.53,58.92大腸、46.24,34.61,79.49胆嚢,54.12,39.08,64.69はと1日目に低下する推移を呈した。胆石、乳癌は術前、7日目それぞれ38.46,7.23、21.66,17.83と漸減した。緊急群は術前691.69の高値が1日目9.3と急激に減少した。IL-8(pg/ml)は胃癌8.22,14.62,7.04、HCC14.62,15.35,13.27、膵癌13.15,249.97,16.17とIL-6同様に推移し、食道41.78,27.09,46.51、大腸10.35,8.02,9.46ともIL-6同様の推移を示した。胆石3.88,3.93,2.81、乳癌3.39,2.5,2.85とIL-6とは反対の推移をした。緊急群はIL-6同様術前361.2、1日目12.98と推移した。単球の免疫能の発現には1)十分な免疫能下においては抗原量の大小に応じた発現2)免疫抑制の状態では抗原量に無関係に発現低下、が示唆された。IL-8は単球由来好中球遊走化因子として生体に合目的的に働く場合と、単球に対して抑制的に働く場合があることが示唆された。
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