癌の転移、浸潤におけるUrokinase type plasminogen activator(u-PA)、u-PA receptor(u-PAR)、PA inhibitor(PAI-1、PAI-2)の役割を検討した。 a)臨床研究 (1)消化器癌組織中のu-PA、PAI-1及びPAI-2抗原量は健常組織に対して有意に高値を示した。 (2)大腸癌において、u-PA高値のものが予後不良であった。 (3)PAI-2高値例はリンパ節転移が少なく、PAI-2がリンパ節転移に抑制的に働くことが示唆された。 (4)ヒト大腸癌および胃癌からu-PA含有量の異なる腫瘍細胞株の系代に成功した。 b)in vitro ヒト腫瘍細胞株を用い、u-PA、PAI-1、PAI-2投与による腫瘍細胞の増殖、浸潤能の変化を検討した。 [結果] 細胞増殖能:u-PAは、濃度依存性に腫瘍細胞増殖効果を示し、PAI-2は、時間及び濃度依存性に腫瘍細胞増殖抑制効果を示した。 細胞浸潤能:u-PAは、濃度依存性に腫瘍細胞浸潤効果を示し、PAI-1、PAI-2は腫瘍細胞浸潤抑制効果を示した。特に同濃度では、PAI-2よりPAI-1で著明な腫瘍細胞浸潤抑制効果を示した。 c)in vivo ヒト大腸癌株ヌードマウス同所移植肝転移モデルを用いて、PAI-1、PAI-2の腫瘍増殖および転移の抑制効果を検討した。 [結果](1)移植腫瘍重量:control群およびPAI-1投与群に対して、PAI-2投与群で有意に低値を示した。 (2)肝転移数:肝転移個体数は、PAI-1およびPAI-2投与群で、有意に低値を示した。 以上より、u-PAは腫瘍増殖効果、PAI-2は腫瘍増殖及び転移の抑制効果を有することが確認され、癌抑制物質としてPAI-2は、新しい治療薬となりえることが示唆された。
|