研究概要 |
【目的】平成7年度は基礎的実験として肝硬変や閉塞性黄疸などの障害肝細胞の代謝動態と腸管分泌蛋白の関係につき検討。 【実験材料・方法】1.実験材料:Sprague-Daurey ratを用い,(1)N群:正常,(2)LC群:肝硬変(Thyoacetamide投与),(3)OJ群:閉塞性黄疸(総胆管結紮)の3群を作成。 2.実験方法:1)障害肝・腸管粘膜の蛋白合成能(Flooding dose法),2)腸管遊離粘膜細胞の分泌蛋白(腸管由来サイトカイン:TNF,IL-1,IL-6),3)腸管分泌蛋白の合成能と肝での摂取率を測定。 【実験成績】1.障害肝並びに腸管粘膜の蛋白合成能(in vivo):1)障害肝の蛋白合成能:LC,OJ群ではそれぞれ66.3±10.8,78.4±16.1%/dayとN群の110.4±12.7%/dayに比して有意に低値。 2)腸管粘膜の蛋白合成能:LC,OJ群ではそれぞれ112.9±34.2,106.6±27.3%/dayに比して有意に高値。 2.腸管遊離粘膜細胞の分泌蛋白(in vitro):1)TNF,IL-1:LC,OJ群ではいずれもN群に比して高値。 2)IL-6:LC,OJ群ではそれぞれ0.43±0.16,0.38±0.11pg/mg proteinとN群の0.14±0.03pg/mg proteinに比して有意に高値。 3.腸管分泌蛋白の合成能と肝での摂取率(in vivo):1)腸管分泌蛋白合成能:総蛋白,サイトカインいずれもLC,OJ群ではN群に比して高値。 2)肝での摂取率:総蛋白,TNF,IL-1は,LC,OJ群ではいずれもN群に比して高値。IL-6は,LC,OJ群ではそれぞれ42.4±16.1,31.9±12.4%とN群の10.1±7.2%に比して有意に高値であり,これは肝の蛋白合成能と有意の負の相関を示した。 【まとめ】障害肝ラットにおいては肝の蛋白合成能は低下しているが逆に腸管の蛋白合成能は亢進しており,生体防御の立場から腸管由来の分泌蛋白は肝の蛋白合成をup-regulateあるいはcompensateしている可能性が示唆された。
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