1)In vivo慢性ラットモデルにおける腸管運動 慢性ラットモデルにおける食後期の運動パターンはex vivo腸管血管灌流モデルで発生する運動と極めて類似していた。Ex vivoモデルで発生する運動は生理的な蠕動運動に近いと考えられ、腸管自体が基本的な蠕動運動を発生する能力を持つことが判明した。 2)p-chlorophenylalanine(PCPA)投与による内因性セロトニン減少が及ぼす影響 PCPA投与により腸管壁内の上皮および筋層内のセロトニン濃度は20〜30%まで減少した。このラットを用いてex vivoモデルで蠕動運動を検討したところ、運動量が著明に減少し、蠕動運動が発生する間隔も著明に延長した。内因性セロトニンが蠕動運動に大きく影響していると考えられた。 3)5HT受容体拮抗薬の蠕動運動に対する作用 5HT1および5HT2受容体拮抗薬は運動に対して影響しなかった。5HT3および5HT4受容体拮抗薬は蠕動運動を抑制した。この際、5HT3受容体拮抗薬は蠕動運動の運動量を減少さすだけでなく、蠕動運動の発生する間隔を延長するのに対して、5HT4受容体拮抗薬は運動量だけを減少させた。これらのことから、蠕動運動は主に5HT3受容体を介して調節されていると考えられた。 ex vivoモデルで発生する運動が生理的な蠕動運動に近いことが判明したことは、今後このモデルを使用して行う薬理学的検討が、その薬物のほぼ生理学的な影響をみていることにつながると考えられ、このモデルの有用性が証明された。PCPA投与による内因性セロトニン枯渇実験から、内因性セロトニンが蠕動運動に大きく影響していると考えられ、セロトニンの重要性が証明された。更に、5HT受容体拮抗薬を用いた研究から、蠕動運動は主に5HT3受容体を介して調節されていると考えられ、今後の腸管の病態生理の研究を進める上で大きな成果を上げた。
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