研究概要 |
1)Cyclin D1に対するアンチセンスを開始コドンを挟んで10種類作成した。いずれも食道癌細胞株に対し、軽度の増殖抑制効果を認めたが有意差を認めなかった。 2)食道癌細胞株はすでに39株を樹立し、現在も継続して行っている。 3)細胞株の検討でp16は23/30(77%),p15は16/30(53%)にMutation, deletionなどの異常を認めた。細胞株の得られた新鮮標本との同時検索が可能であった12例では新鮮標本の3例にmutationを認めたが、細胞株に比しp16の異常は低率であった。細胞株で8/9(89%)にもとの新鮮標本に無い異常が検出された。継代10代前後の細胞株ですでに新鮮標本に認められないp16のHomozygous deletionが認められた。 4)CDK4の検討では72例中8例に増幅を認め増幅例において予後不良の傾向を認めたが有意差は認められなかった。 5)HPVについては最近の50症例について検討したが、RT-PCRにてHPVは検出されなかった。またHPV陽性切除標本より樹立された細胞株においてはHPVはすでに失われていた。 6)術前化学療法と組織学的効果判定からMDM2増幅,p53 mutation, HPV infectionのいずれかが認められた症例は抗癌剤に有意に抵抗性であった。 7)細胞培養で単層培養可能な症例は予後不良で生検標本による検討でも症例数は少ないものの有意差をもって予後不良であった。 8)生検材料による遺伝子検討ではp21の発現亢進例で予後不良であったが、Cyclin D1の発現例は増幅例と異なり予後因子とはならなかった。
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