研究概要 |
1.食道異型上皮(dysplasia)の食道癌における前癌病変としての意義 今回われわれは食道癌組織に併存するdysplasiaを対象に細胞増殖や血管新生の制御に関わるサイトカインの1つであるTransfoming growth factor β1(TGFβ1)の発現からみた検討を行うことにより、食道dysplasiaの意義をさらに明らかにすることを目的に研究を行った。 対象としては術前無治療食道癌24症例の切除標本を用い各病変部位におけるTGF-β1の発現を免疫組織学的(V.polyclonal,Santa Cruz.)に検討した。 結果としては、正常上皮を陽性対象とし検討した所dysplasiaではその程度(mild,moderate,severe)に関係なくTGF-β1の発現は強陽性0、陽性5.7%、陰性94.3%と、上皮内癌の0、16.7%、83.3%と同様その減弱がみられた。以上より、dysplasiaの多くはすでに質的に癌性変化を来したものであり、前癌病変というよりはむしろ潜在癌病変と呼ぶにふさわしいものであり、癌に準じた対処が必要であることが示唆された。 2.食道癌の初期浸潤形式と血管新生に関する研究 術前無治療食道癌8例の切除標本に存在する25箇所の上皮内癌ないしは微小浸潤食道癌に関し、その浸潤形式を“flat",“expansive",および“downgrowth"のtypeに分類し、第8因子関連抗原(Factor VIII-related antigen,A082,Decopatts)を用いた免疫染色によりlcmの範囲における病変直下の血管数を算出した。 その結果初期浸潤形式が“flat",“expansive",さらに“downgrowth"patternになるに従って有意に新生血管数は増加していた。 以上より食道癌初期浸潤における血管新生はその浸潤形式とより関連があることが明らかとなった。
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