研究概要 |
胆道癌は浸潤性が高く,消化器癌の中でもっとも予後が悪い疾病の一つである。細胞の浸潤転移性を解析するために我々は胆嚢癌患者から癌細胞を培養し新たな細胞株を3株樹立した。それらを含む胆嚢癌細胞株(GB-d1,GB-d2,GB-h3,FUGBC-1)を用いて、細胞の浸潤機構を解析した。【結果】1.HGFの浸潤誘導作用(1)ほとんどの胆嚢癌細胞株(GB-d1,GB-d2,GB-h3)はtype I collagen gel浸潤モデルにおいて肝細胞増殖因子(HGF)により周囲組織への浸潤性増殖が誘導された。EGF,FGF,TGF βはこのような誘導作用を示さなかった。(2)同様にMatrigel浸潤モデルでも,HGFがこの3株の癌細胞の浸潤性を誘導した。(3)HGFはすべての細胞株で細胞運動性を誘導刺激した。(4)HGFの受容体であるc-MET遺伝子産物の産生を検討すると前者3株では強く発現していた。(5)HGFは胆嚢癌細胞からは産生されておらず周囲の間質線維芽細胞から分泌されていた。これらのことからHGFによる癌の浸潤誘導は間質細胞との相互作用によるものと考えられた。2.胆嚢癌浸潤におけるproteaseの役割を検討すると、(1)HGFが添加されていなくてもGB-d1,GB-d2,GB-h3では高いレベルのtype IV collagenaseとu-PA活性を産生していたが、FUGBC-1では産生量は非常に少なかった。(2)HGFにより浸潤を刺激すると、GB-h3のみでMMP-2活性が高まったが、ほかの株では影響がなかった。【結論】以上の結果より、胆嚢癌の浸潤は癌細胞自身のprotease産生能力に加えて、間質細胞が分泌したHGFにより誘導された細胞運動性亢進の両者によって引き起こされていることが示唆された。これらの浸潤機構の解析から浸潤阻止や癌治療の標的が明らかになった。
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