これまでp53がDNA ploidy patternや増殖活性と相関し、また早期胃癌の発育形式とも相関することを示してきた。また胃癌などの培養細胞株において、p53が抗癌剤治療後のapoptosisや治療効果と相関することを明らかにしてきた。本年度は進行胃癌におけるp53の意義を明らかにする目的で研究を行った。 進行胃癌切除例196例を対象として、胃癌組織におけるp53異常蛋白の発現を免疫組織学的に検索し、臨床病理学的因子および発育形式との関連を検討した。p53異常蛋白の発現はPAb1801抗体を用いて検索した。196例中、p53蛋白が陽性な症例は94例(48%)であった。リンパ管および静脈侵襲はp53異常蛋白陽性例に有意に高頻度を認めたが、他の病理組織学的因子との相関はみられなかった。発育形式は粘膜に平行に広がるFunnel type(superficially spreading growth)と、粘膜に垂直方向への浸潤が強いColumn type(vertical growth)とMountain type(penetrating growth)に分類した。p53異常蛋白陽性率はColumn typeとMountain typeでは53.8%と52.9%であったがFuunel typeでは28.9%であった。(P<0.05)。予後についてはp53異常蛋白陽性例と陰性例の5年生存率は25.4%と44.2%であり、多変量解析においてp53異常蛋白発現は腫瘍径、肝転移、発育形式とともに独立した予後因子であった。従ってp53は早期癌のみならず進行癌においてもgenetic instability発育形式や予後と深く関与していたことが示された。
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