研究課題/領域番号 |
07671405
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研究種目 |
一般研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山口 幸二 九州大学, 医学部, 助手 (50191226)
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研究分担者 |
亀岡 宣久 九州大学, 医学部, 医員
五十君 祐玄 塩野義製薬, シオノギバイオメディカルラボラトリー, 所長
濱崎 直孝 九州大学, 医学部, 教授 (00091265)
千々岩 一男 九州大学, 医学部, 講師 (90179945)
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キーワード | ホスホエノールピルビン酸 / 肝虚血・再環流障害 / ラット / エネルギーチャージ / 解糖系 |
研究概要 |
高エネルギー性・解糖系中間産物であるホスホエノールピルビン酸(PEP)は、肝細胞膜をpassive transportで細胞質内に通過し、ピルビン酸に代謝される際、ATPが産生される。肝細胞のエネルギー代謝障害に、PEPが有効であることが期待される。平成7年度は、ラット肝門部全肝温疎血(Pringle法)後の虚血再環流障害におけるPEP投与効果を検討した。30分間のPringle法直後の再環流時に400mmol/LPEP・400mmol/Lブドウ糖液を門脈より5分間投与し、投与前・投与直後・投与5分後と30分間後の肝エネルギー・チャージ(EC)・AMP・ADP・ATP・総アデニンヌクレオチド(TAN)・動脈血中乳酸・ピルビン酸濃度を測定した。TANはPringle直後、Pringle法前より有意に低下し、以後の測定期間中、各群に変化はなかった。ECはPringle直後の試薬投与前は0.160±0.038(n=4)、PEP投与直後で0.437±0.028(n=5)、ブドウ糖のECは0.210±0.018(n=5)と有意に改善した。投与5分後・投与30分後では2群間に有意な差を認めなかった。肝ATPも肝ECと同様にPEP投与直後で、ブドウ糖投与直後のものと比較し有意に増加していた。動脈血中乳酸濃度は、全経過中2群間で有意な差は認めなかった。動脈血中ピルビン酸濃度は、Pringle法前で1.184±0.145(n=4)、再環流直後3.290±0.524(n=4)だったが、PEP投与直後・5分後で6.194±0.204・5.895±0.155とブドウ糖投与直後・5分後より有意に増加がみられた。以上より、PEPが肝細胞内でピルビン酸に代謝され、肝ECの改善をもたらしたと考えられた。肝虚血再環流による細胞障害の早期回復に、PEPは有用である事が示唆された。平成8年度は、肝切除術への臨床作用を念頭に置き、早期致死率の高い広範囲肝切除モデルへのPEPの効果を検討する予定である。
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