研究分担者 |
亀岡 宣久 九州大学, 医学部, 医員
五十君 祐玄 塩野義製薬, シオノギバイオメデイカルラボラトリー, 所長
濱崎 直孝 九州大学, 医学部, 教授 (00091265)
千々岩 一男 九州大学, 医学部, 講師 (90179945)
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研究概要 |
解糖系の高エネルギー中間産物であるホスホエノールピルビン酸(PEP)は肝細胞膜を濃度勾配で細胞質内に通過し、1モルのPEPから1モルのピルビン酸に代謝される際に1モルのATPが産生される。この反応は不可逆性で即座に一方的に進行するため肝細胞エネルギー代謝障害改善に有効であることが期待される。平成7年度にはラット全幹(肝動脈、門脈、胆管)虚血、再環流障害において再環流時にPEPを投与し、肝虚血再環流直後に肝エネルギー代謝改善効果があることを示した。平成8年度は1)肝切除術へのPEP法の応用と2)PEP投与法改善の2点につき検討した。1)肝切への臨床応用を念頭に置き、90%ラット肝切モデルでPEP投与効果を検討した。平成7年度の結果よりPEP効果は投与直後に限られていたので、90%肝切後、PEPを低濃度持続注入(100μmol/L,2ml/hr)し検討した。生食群(n=6)の1日生存率は50%であるのに、PEP群(n=6)は37%であった。生存生食群(n=3)の肝エネルギーチャージは0.67±0.02で、生存PEP群(n=1)は0.39であった。PEP群の血中ピルビン酸(1.2±0.1mg/dl)、乳酸(18.4±1.4mg/dl)は6,80mg/dlと高値でピルビン酸や乳酸の蓄積によるアシドーシスのためPEP群は生食群より有意に早期に死亡したと考えられ、90%肝切後PEP持続投与の効果はなかった。2)肝虚血再環流の肝障害は肝虚血時肝エネルギー代謝障害が引き金となる。全幹虚血15分間にクランプ肝側門脈よりPEPを虚血肝へ持続注入したPEP群(400μmol/L,6ml/hr)(n=2)、コントロールとして生食及びブドウ糖を注入(n=2)した生食群(n=2)、ブドウ糖群(400μmol/L,6ml/hr)(n=2)の肝虚血後ECはそれぞれ0.45±0.06,0.28±0.02,0.28±0.01で肝虚血時PEP投与の有効性が示された。平成9年度は肝虚血時及び再環流時にPEP持続投与後肝切を加え、肝切に対する肝投与効果を検討する予定である。
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