研究概要 |
今年度はこれまでの研究の連続性から、胆嚢癌細胞に対する増殖形態形成因子についての実験を行った。まず、正常胆嚢粘膜上皮細胞の初代および継代培養細胞のコラーゲンゲル内培養系ではMRC5との同時培養で得られる嚢胞形成能の促進活性が、WI-38,BALB/3T3など数種類の線維芽細胞にある程度普遍的に認められ、EGF,HGF,epimorphinにもその促進作用が活性の差異はあるものの認められた。一方、TGF-βの添加では全く異なった放射状分枝形態を示した。しかし、継代培養細胞に対してはMRC5との同時培養でのみ嚢胞形成能の再獲得がみられ、MRC5には細胞間接着を再獲得させる何らかの因子が産生されているものと推測され、この因子はfreeze-thaw,60℃30minにて失活する分子量10万以上の蛋白質であることが判明した。また、免疫組織化学的および電子顕微鏡的解析では、その形態形成には細胞-細胞間隙に存在するデスモゾームや接着複合体、その接着因子であるデスモコリンやカドヘリン、さらに細胞骨格を形成しているケラチンフィラメントおよびアクチンフィラメントの形成が関与してることが明らかとなった。他方、胆嚢癌株細胞のコラーゲンゲル内培養によるゲル収縮実験から、通常のコラーゲンゲル内培養では管状分枝構造をとるのに対し、浮遊コラーゲンゲル内培養ではゲルは著明に収縮し、胆嚢癌株細胞が正常胆嚢細胞に類似した嚢胞構造を再獲得することが認められ、胆嚢癌の増殖形態には周囲の間質のdensityや環境に大きく左右されることを明らかにした。
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