研究概要 |
[目的]肝虚血-再潅流障害における接着分子及び活性酸素の関与ならびにPGE1門注の肝保護効果について検討した。[実験により新たに得られた知見]1.塩化ガドリニウムによる抑制実験の結果、温虚血である本実験モデルではKupffer細胞の関与は少なくTNFαは測定感度以下であった。再潅流後に肝細胞、類洞内皮細胞から発生する活性酸素は生体蛍光顕微鏡による観察の結果、再潅流後60分後がその発生のピークであった。再潅流後の好中球と血管内皮細胞の相互作用の時間的空間的変化は、再潅流後60分以降で有意に中心静脈を中心とした好中球の集積増加と血流障害が観察され、肝微小循環障害の一因であると考えられてた。免疫組織染色による検討では中心静脈内皮細胞上にはICAM-1の発現が認められた。2.臨床で広く使用されているPGE1の肝保護機序について検討した。PGE1は再潅流後のGOT,GPTの上昇を抑制し、蛍光ヒアルロン酸停滞率でみた類洞内皮細胞障害も抑制したほか、胆汁分泌量を有意に増量させた。肝細胞、類洞内皮細胞からの活性酸素の発生はPGE1門注により抑制された。また好中球の内皮細胞への接着の増加は有意に抑制され、この機序としてはPGE1はICAM-1の発現を抑制し、好中球上の接着分子のLFA-1,Mac-1の発現には影響を及ぼさなかったことにより(フローサイトメトリーで測定)、PGE1の新たな効果と考えられた。[結語]PGE1は直接作用による活性化酸素発生の抑制のほかに、ICAM-1発現を抑制し、好中球の内皮への接着を抑制することによる肝保護作用を示すと考えられた。
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