本研究は、急性または亜急性に肝不全に陥った患者に対する補助肝移植による治療法開発の基礎的検討をラットモデルを用いて行った。 A.急性肝不全モデルの作成とその評価:体重200〜300gの近交系LEWラット(RT1^l)を使用した。エーテル麻酔下に左肋骨弓下切開で開腹し、脾臓を創外に出し左側腹部皮下に固着した。4週間後、横切開にて開腹し、門脈を脾静脈合流部より肝門で結紮した。これを肝外門脈閉塞モデルとして、体重及び肝重量、さらに肝機能の変化を観察した。肝の変化は組織学的検討をつけ加えた。また門脈造影を施行し、その血行動態を見た。結果は門脈結紮後腸管鬱血なく生存したP-Sラットは72%(13/18)であった。生存したラットは一過性の体重減少をきたしたが、3週後にはコントロールラット(開腹のみ)と同等になった。門脈結紮後一過性に肝障害をきたしたが、経時的に開腹した。肝重量は徐々に減少し3週後にはコントロールラットに比し70%減少した。門脈遮断時の造影では脾臓を介して側副血行路を経て体循環系に流入する像が確認できた。肝の組織学的検索では中心静脈周囲の肝細胞を中心に著明な細胞萎縮を認めた。 B.ラット異所性肝移植モデルの作成と代謝改善の評価:ラット異所性肝移植(ALT)モデルを開発した。カフによる血管吻合を行うためきわめて高い成功率を示した。本モデルを用いてWS正常ラット肝を先天性高ビリルビン血症ラット(Gunn)にALTを行った。代謝は移植後すみやかに改善し、本ALTモデルは肝不全時に対応できるものと判断された。 C.急性肝不全ラットへの異種ALTモデルの応用:異種モデルとしてマウス-ラット、ハムスター-ラットの組み合わせで検討を行った。ALTは前述に記したモデルを応用して行った。ドナー肝の大きさや胆道系ドレナージにその技術の難しさがあった。サイクロフォスファミドとFK506の免疫抑制剤を組み合わせることで異種肝の長期生着が誘導された。このようなレジメを用いることで急性肝不全から自己肝が回復するまでの間、異種肝によるサポートが可能であると考えられた。
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