研究概要 |
1、臨床面からの検討:スキルス胃癌の特徴として、リンパ流、腹腔への直接播種により転移臓器の関質の硬化を来し臓器障害を起こすことが挙げられる。このような遠隔転移を持った高度進行胃癌における外科治療の問題点につき検討し予後規定因子、至適手術術式、腹膜転移胃癌の問題点を明らかにした。 2、実験的検討:(1)組織培養;コラーゲンゲル培養法を用い3種の癌細胞(KATOIII,MKN45,WiDr)と5種のヒト線維芽細胞(TIG101,MKF1,MF2,MF3,KF2)により検討した。その結果、癌細胞ではコラーゲンゲルの収縮は認められず、この現象は線維芽細胞固有の性質であることが判明した。また、その収縮の程度はその線維芽細胞の起源により異なっていた。スキルス胃癌間質由来ヒト線維芽細胞とスキルス胃癌細胞とのコラーゲンゲル内の混合培養において(In-Vitroスキルス胃癌モデル)、ゲル収縮は線維芽細胞のコラーゲン繊維の認識、再編成が重要な一因を担っていると考えられた。なお、本モデルはスキルス胃癌の間質の病態を明らかにする新しいモデルとして今後さらに応用しえるものと考えられた。(2)動物実験;スキルス胃癌細胞をヌードマウスの胃壁、腹腔内に単独、コラーゲンとともに、コラーゲンと胃壁由来線維芽細胞とともにそれぞれinplantした結果、いずれも胃には癌の増殖は得られなかったが、腹腔内投与においてはコラーゲンとともに投与したものに腹腔内に癌の増殖が確認し得た。スキルス胃癌において、癌間質の主要成分であるコラーゲンが腫瘍の増殖、進展に重要な役割を持つ可能性が示唆された。 3、スキルス胃癌の特異な進展形式を明らかにするため、胃癌病理組織切片より腫瘍形態をコンピューターグラフィックスを用いて立体構築しその腫瘍体積を測定する方法を考案した。現在その臨床的意義につき検討中である。
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