研究概要 |
1.ハイブリッド型人工食道内腔の上皮細胞重層化促進の為に,線維芽細胞を導入して次の実験を行った. (方法)PGA meshとヒト食道粘膜固有層由来の線維芽細胞8×10^5個/mlを包埋した豚腱由来Typelaコラーゲンゲル上で食道新鮮切除標本の正常食道粘膜から採取した食道上皮細胞を培養し、in vitroでPGAmeshを縫合して作製された管腔をヌードラット腹直筋弁に移植した. (結果)移植7日目にヌードラットより,腹直筋弁に被覆されたPGAメッシュチューブを摘出したところ,長径2cm,内径6mmの管腔が作製されていた.組織像では,内腔は全周性に約8層に重層化したヒト食道上皮細胞で被覆され,管腔の狭窄はみられなかった. 移植後14日目に摘出した管腔の組織像では,内腔は全周性に約20層に重層化したヒト食道上皮細胞でも被覆され,また,間質への慢性炎症性細胞の浸潤は軽度で,新生血管の増生を認めた.移植後23日目においても管腔は維持された. 2.上述のハイブリッド型人工食道への筋層構造導入のために次の実験を行った. (方法)ヒト大動脈由来の平滑筋細胞包埋したTypelaコラーゲンゲルとヒト新生児皮膚真皮由来の線維芽細胞Typelaコラーゲンゲルを重層してゲル化させた.その上に食道新鮮切除標本の正常食道粘膜を酵素処理して得られた食道上皮細胞を播種した.in vitroで7日間培養後,dishより剥離し,ヌードラット広背筋上に移植した. (結果)in vitroでさらに二週間培養したシートにおいては,線維芽細胞と平滑筋細胞がそれぞれ粗な細胞密度で一定の極性を持たずに分別して存在した. 移植後1週間後,2週間後のシート双方において,シートの下層において収縮型の平滑筋細胞が一定の極性をもって配向していた.また,この層は明らかに上層の線維芽細胞の層と独立して存在した.後者においては前者と比較し,平滑筋細胞が密に筋束を形成し,血管新生,上皮細胞の重層化も促進され,より正常食道壁に類似した構造であった.
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