研究概要 |
17種類の扁平上皮癌細胞株(TE1, 2, 3, 4, 5, 6, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, A431, Ca9-22, NA),及び食道扁平上皮癌患者21例,42検体についてNorthern blot法によりVEGFのmRNAの発現を調べた結果以下のことが判った. (1)17種類の扁平上皮癌細胞株全てにおいてVEGFのmRNAの過剰発現を認め,TE13, TE15, A431, NAの4株においては特に過剰な発現を認めた.(2)食道扁平上皮癌組織と正常食道粘膜組織ともにVEGFのmRNA発現を認めた.(3)臨床検体21例中5例において,腫瘍組織におけるVEGFのmRNA発現量は正常食道粘膜に比べ4倍〜26倍の高値を示し,VEGFを過剰発現した5例全てが深達度mp以上の進行癌であり,2例に術後1年以内の肝転移を認めた.(4)同じ病期群における比較において,VEGF過剰発現群は非過剰発現群に比べ転移リンパ節個数が多く,v因子,ly因子陽性率が高い傾向を示した.(5)腫瘍隣接組織中の微小血管密度は54〜164/mm^2であり,VEGFのmRNA過剰発現群と非過剰発現群の腫瘍隣接組織中微小血管密度は各々114±37, 78±21/mm^2で過剰発現群の方が有意に高いことが分かった,(6)VEGF発現と微小血管密度との間にVEGF抗を用いた免疫組織染色においても相関性が認められた. VEGFは腫瘍血管新生とともに癌細胞の脈管への移行を促進し,食道扁平上皮癌の生物学的悪性度に関連すると考えられ,VEGF/flt系の制御による治療応用の可能性が示唆された。
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