研究分担者 |
保科 定頼 東京慈恵会医科大学, 医学部・臨床検査医学, 講師 (30119846)
横田 徳靖 東京慈恵会医科大学, 医学部・外科学講座第2, 助手 (80256461)
中里 雄一 東京慈恵会医科大学, 医学部・外科学講座第2, 助手 (30266655)
恩田 啓二 東京慈恵会医科大学, 医学部・外科学講座第2, 助手 (70246388)
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研究概要 |
特発性細菌性腹膜炎における腸内細菌の腹腔内への侵入経路は不明でありこの経路について検討した. Thioacetamideを投与した肝硬変ラットと,生理的食塩水を投与したコントロールラットを対象とした.下部小腸または大腸をそれぞれ二点で結紮し閉鎖された腸管腔の中にマーカー菌としてリファンピシン耐性大腸菌を注入し,注入後24時間または48時間で再開腹して腹腔洗浄液,門脈血,静脈血,動脈血,閉鎖した腸管領域の腸間膜をそれぞれ培養した. またAutobacteriographyを作製しマーカー菌の全身分布を観察した. 肝硬変ラットでは腹腔洗浄液にマーカー菌を認めたが,コントロールラットでは認められなかった.Autobacteriographyにおいても肝硬変ラットでは腹腔内にマーカー菌を認めたが,コントロールラットでは認められなかった.肝硬変ラットおよびコントロールラットとも門脈血でも動・静脈血でもマーカー菌は認められなかった. 肝硬変にみられる特発性細菌性腹膜炎において腹腔内への細菌の移送は血行性リンパ行性の経路は関与が少ないと考えられ,腸管腔から腹腔内へと直接侵入した可能性が大きいと推測された. 一方,臨床例の検討では腹水培養で細菌が証明されることは少なかった.このことからSBPの発症には必ずしも腹水中の生菌だけでは説明がつかない面もある.肝硬変ラットにおいて培養で菌が検出できない腹水でも,原核生物特有の塩基配列をPrimerとしたPCRでは腹水中の微量大腸菌あるいは死菌の存在が検出できた.腹水中の生菌死菌のDNAをPCRで検出する方法は感度が高く迅速診断が可能で,臨床的にSBPの診断に応用できると考える.
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