研究概要 |
今年度の研究実施計画より、医科の項目を今年度の研究成果として報告します。 1.現在まで集積した胃癌、肝硬変、肝癌症例および正常対象群1500例より、胃癌82例、肝硬変46例、肝癌31例に対する年齢、性別をそろえたケースコントロールスタディを作成した。 2.このケースコントロールスタディを用いてチトクロームp4502E1遺伝子(CYP2E1)のうちRsal制限酵素による遺伝子多型性(RFLP)をPCR-制限酵素処理法により判定した。 3.同様に増殖に関与する癌遺伝子であるL-myc遺伝子の多型性分析を行った。 4.さらにベンツピレンなどの芳香族アミンの代謝活性化に関与するCYP1A1、グルタチオン還元酵素の一種であるGSTM1遺伝子の多型性分析を行った。 5.これらの結果をx^2検定、Odds Ratio(相対危険度)などの検定で統計学的に検討したところ、CYP2E1 Rsal遺伝子多型性の特定の遺伝子タイプと胃癌、肝癌の発生には、この症例数で有意差は認められなかった。しかしながら肝硬変の発生に、特定の遺伝子タイプの関与の可能性が示唆された(Phamacogenetics,1995)。また、これらの遺伝子多型性が発癌物質によるDNA障害の程度に直接関与する可能性(J Nat Cancer Inst.1995)が示唆された。 これらより、癌の早期発見や転移の予測の可能性、さらに肝硬変などの疾病の原因が遺伝子の変異でおこる可能性が示されたため、次年度にさらに詳細に検討する予定である。
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