現在まで胃癌500症例、食道癌70症例に加え、肝癌、肝硬変症例80例、乳癌症例70例のDNAを抽出した。また年齢、性別を揃えたケースコントロールを作成するために、700例におよぶコントロールを集めデータベースとした。 このケースコントロールスタディを用いてチトクロームp4502E1遺伝子(CYP2E1)のうちRsal制限酵素による遺伝子多型性(RFLP)をPCR-制限酵素処理法により判定した。 同様に増殖に関与する癌遺伝子であるL-myc遺伝子の多型性分析を行った。 さらにベンツピレンなどの芳香族アミンの代謝活性化に関与するCYP1A1、グルタチオン還元酵素の一種であるGSTM1遺伝子の多型性分析を行った。 これらの結果をx2検定、Odds Ratio(相対危険度)などの検定で統計学的に検討したところ、CYP2E1 Rsal遺伝子多型性の特定の遺伝子タイプと肝癌の発生、CYP1A1 Exon7遺伝子多型性と胃癌の発生に相関が見られ、現在詳しい解析を進行している。しかしながらCYP2E1、GSTM1と胃癌には関連が見出されていない。 これらより、癌の早期発見や転移の予測の可能性、疾病の原因が遺伝子の変異(宿主側の因子)で起る可能性が示されたため、今後この分野の研究の重要性が判明したと考えられる。
|