研究概要 |
1.実験群の作製と方法:100g前後のSyrian golden hamsterに発癌物質のdiisopropanolnitrosamine(DIPN)500mg/kg体重を週1回の頻度で10週間腰部皮下に投与した。これらのハムスターを標準固型飼料投与のDIPN対照群、0.5%タウロコール酸ナトリウム経口投与のDIPN-TCA群および0.5%デオキシコール酸ナトリウム経口投与のDIPN-DCA群に分け、各群いずれも45匹づつにて実験を開始し、10,15,20および25週目に肝臓を摘出した。 2.体重の変化:実験開始後に各群ハムスターの体重は経時的に増加したが、DIPN-TCA群では25週目に、DIPN-DCA群では20週と25週目にそれぞれDIPN対照群より有意に体重の減少がみられた(P<0.05-0.01)。なお、各群において経過中に3-5匹の死亡脱落を認めた。 3.病理組織学的所見:10週目以後、胆汁酸投与の両群の肝表面は黄褐色を呈し光沢を減じ、肝縁は鈍化していた。また、胆汁酸投与の両群では、15週目より、DIPN対照群では20週目より胆表面に0.1-2.0cm大の乳白色を呈する腫瘍結節の発生をみた。この腫瘍は組織学的に胆肝細胞癌であった。肝内胆管の組織学的変化として、細胆管増生、裹胞状細胆管増生、乳頭状増生およびgoblet cell metaplasiaなどが観察された。胆汁酸投与の両群における胆管上皮の組織学的変化の発生率はDIPN対照群に比し高率であったが有意差をみなかった。 4.胆管細胞癌発生率と腫瘍発生個数:胆汁酸投与両群の癌発生率と腫瘍個数は有意ではないが、DIPN対照群に比し高率または高値であった。顕微蛍光側光法によるこれら腫瘍のDNA量を測定したところ、DNA distribution patternにおいてdiploidあるいはaneuploid patternが観察された。
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