研究概要 |
1.Syrian golden hamsterにdiisopropanolnitrosamine(DIPN)を10週間投与し、実験開始よりハムスターに標準固型飼料(DIPN対照群)、コール酸飼料(DIPN-TCA群)およびデオキシコール酸飼料(DIPN-DCA群)を投与した。15,20および25週目に肝臓を検索した。 2.15,20および25週目の各群ハムスターの肝臓内に増殖細胆管および嚢胞状細胆管病巣を、また、胆汁酸投与両群では15週目より、DIPN対照群では20週目より胆管細胞癌の発生をみた。これら病巣の発生率はいずれも胆汁酸投与群に高率であった。 3.増殖細胆管病巣と胆管細胞癌における細胞核 DNA量およびDNA distribution patternを解析した。各群の各病巣では、週を経るにつれ、DNA量の増加とヒストグラム上における細胞集団の分散がみられたが、胆汁酸負荷群で著明であった。胆汁酸負荷、特に DCA負荷では個々の病巣内での DNA patternのheterogeneityあるいは polyploidizationの促進が観察された。 4.細胞核面積は増殖細胞胆管の両病巣および胆管細胞癌において経時的に増大したが、前者では胆汁酸負荷群とDIPN対照群の間に有意差があった。 Proliferating cell nuclear antigen(PCNA)陽性細胞率の所見も各面積の所見と同様であり、胆汁酸負荷群では各病巣とも陽性細胞率は高かった。 P^<53>蛋白の発現を増殖細胆管病巣と胆管細胞癌につき免疫組織化学的に検索し各群における陽性発現率を比較した。前者の病巣では低率であったが、DIPN-DCA群は25週目に他の群より高率であった。また、胆管細胞癌も同様で、有意ではないが、この群は高率(50%)を示した。 これらの成績は、胆汁酸負荷がDIPN誘発細胆管および胆管細胞癌の増殖と悪性化を促進することを示し、更に bile ductule-carcinoma sequenceの存在を示唆した。
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