研究概要 |
1.J型結腸嚢再建による貯留能の増加で従来のストレート再建より排便機能が改善されることはrandomized studyでも確認されている。しかしJ型結腸嚢再建の欠点に排便困難があり、これはpouchサイズと関係すると考え5cmと10cmのJ型結腸嚢を使ったrandomized studyでJ型結腸嚢の至適サイズの決定を試みた.5cmJ型結腸嚢再建群(5J)20人、10cmJ型結腸嚢再建群(10J)20人が機能評価された.排便スコアーによる臨床的機能評価は5Jと10Jの間に差はなかった.生理的機能評価のうち貯留能については5Jは10Jよりも小さいが,排便能については5Jは10Jより優れていた.以上よりJ型結腸嚢の至適サイズは排出能を損なうことなく10Jと同じ臨床的機能の得られる5cmであるという知見を得た. 2.術後早期(1-3月)と術後1年以上にpouchgraphyを行い,排便困難の原因を調べた。pouchgraphy正面像で横径は5Jの術後早期例(8例)で平均5cm,術後1年以上経過例(12例)で6cmで拡大率1.2に対し10Jは5cm(6例)が9cm(8例)となり拡大率は1.8と大きい。側面像でpouch底部のrectocele-like prolapseの出現は5J及び10Jの術後早期例にはないが10Jの術後1年以上経過例の75%にみられ,pouchの長軸と水平線のなす角(pouch-horizontal angle)は5Jで変化がないが(60°から62°),10Jは60°から36°に減少する。以上より10Jの排出能低下に経時的なpouchの過膨張,rectocele-like prolapseの出現,pouchの骨盤内での水平化が関与するという知見を得た。
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