研究概要 |
腺腫・submucosal cancer(SM癌)を含む大腸ポリ-プ101例を対象にp53とbcl-2免疫染色を行い,腺腫・癌の異型度別にp53・bcl-2遺伝子蛋白発現を検討した.p53染色は,mild,moderate、severe dysplasia腺腫,sm癌で,それぞれ2%,12%,33%,65%が陽性で,異型度の進行と有意な相関が認められた.一方、bcl-2染色はmild,moderate dysplasia腺腫でそれぞれ28%、47%が陽性であったが,moderate dysplasia腺腫以上に異型度が進行してもbcl-2染色頻度は変わらなかった.p53染色とbcl-2染色との関連を検討すると,p53ならびにbcl-2染色ともに陽性腺腫は5%で,ともに陰性は53%であった.両染色陽性例を異型度別に検討すると,mild dysplasia腺腫では認められなかったが,異型度が進行するにしたがい両染色陽性率が増加した.以上の結果から、一部の腺腫ではmild dysplasiaからmoderate dysplasiaに進行する段階で、bcl-2遺伝子蛋白が発現することによりアポトーシスの抑制がおこり,p53遺伝子変化がおこりやすくなると考えられる.またmicrosatellite markerを用いた大腸癌を対象としたreplication errorの解析では、Dukes A大腸癌で20%の頻度でgenetic instabilityが認められたが、癌の病期が進行してもgenetic instabilityの頻度は不変であった。ある種の大腸癌では,癌に進展する前段階ですでにDNAミスマッチ修復エラーが起こっていることが示唆される.
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