研究概要 |
膵管胆道合流異常における胆道発癌の成因・病態を解明すべく、生理的に長い共通管を有するハムスター、山羊、ラットの膵液酵素組成をヒトと比較検討した。次に、その結果に基づき、胆道癌を誘発する発癌剤(BOP)を投与したハムスターに、胆嚢瘻よりヒト膵液を注入するモデルを作成し、10週及び15週後のハムスター胆道の病理組織学的変化を観察し、以下の結果を得た。 1)膵液酵素組成では、ハムスター、山羊はヒトに比べて、trypsin, elastase-1, phospholipase-A_2等の蛋白分解酵素が著しい低値を示した。amylase値には有意差はみられなかった。 2)胆道系の腺腫及び癌の発現頻度が、ハムスターに発癌剤(BOP)を投与し、胆嚢瘻よりヒト膵液を注入した群では、それぞれ82%、64%であるのに対し、発癌剤を投与し生食を注入した群と比較して、有意に高値を示した。 3)ヒト膵液のみを注入した群では、総胆管は円筒状の拡張を呈し、経時的に粘膜上皮の過形成性変化の増強を見るが、10週までの観察では腺腫および癌の発生は見られなかった。 以上、ヒト膵液は胆道癌の発癌促進に強い影響を与えることを示し、本実験は膵管胆道合流異常モデルの発癌実験として有用な、また、本質をついた実験モデルと考える。
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