本研究では共通管の著しく長いハムスターを用い、膵・胆道系の発癌剤であるN-nitrosobisamine(BOP)を投与し、胆道系を病理組織学的に検討すると共に、更にヒト膵液をハムスターの胆嚢内に注入することにより胆道系の発癌がより誘発されるかについて検討を行った。更に、市販のトリプシン、エラスターゼの蛋白分解酵素を同様にハムスター胆嚢内に投与し、胆道発癌誘発に関与するかを検討した。 【結果】(1)ヒト膵液投与のみでは胆管癌は見られなかったが、肝外胆管のhyperplasiaが全例見られた。ヒト胆汁の投与では少数例にhyperplasiaを認めるのであった。 (2)BOPのみでは、肝内胆管癌は見られたが、肝外胆管癌は見られなかった。 (3)BOPとヒト膵液投与では47%に胆管癌の発生を示し、BOPのみと比し有意に高率であり、38%が肝外胆管癌であった。 (4)トリプシン及びエラスターゼ投与例では未だ発癌例は得られなかった。 【結論】ヒト膵液は胆道発癌の誘発に促進効果を示し、本実験モデルは膵管胆道合流異常の胆道発癌モデルとして有用であり、今後酵素製剤での癌誘発とK-ras及びp53遺伝子の経時的変化を追求したい。
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