MAGE遺伝子の発現を食道扁平上皮癌において蛋白レベルで検索し、その臨床的意義について検討を加えた。蛋白レベルでの検索は、サンドイッチELISA法で蛋白濃度を測定した。非癌患者69例の血清中、MAGE蛋白濃度をELISA法で測定した結果、平均値は0.25±0.39ng/mlであり平均値+2SD (1.03ng/ml)をCUT OFF値とした。次に、MAGE-4蛋白の発現を4種のヒト食道癌培養株を用いて測定した。MAGE-4mRNAの陽性の2株は細胞内蛋白及び培養上清中ともにMAGE-4蛋白が陽性を示し、mRNA発現が陰性の2株はいずれも陰性であった。次に、食道扁平上皮癌13例の癌組織片の蛋白濃度を測定し、その陽性発現頻度は3例(23%)であった。食道癌患者62例の血清では、22例(35%)にMAGE-4蛋白の発現を認め、切除術を試行した34腫瘍のMAGE-4蛋白発現と病理組織学的因子との関係に有意な関係を認めなかったが、a0例で20%、またstage I-IIでも13%と比較的早期の癌腫の血清中にMAGE-4蛋白発現が認められた。さらに、術前に血清中MAGE-4蛋白が陽性であった3例は術後の陰性化した再発が認められなかったが、術後に陽性であった1例は再発が認められた。ELISA法による血清中MAGE-4蛋白濃度の検索は、簡便で精度も高いことが示唆された。また、MAGE-4蛋白は食道癌患者血清中35%に発現し新たな腫瘍マーカーとしての可能性が示唆された。
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