研究概要 |
我々は、生化学的検討からMMP-3は単独でProMMP-9を活性化し、plasminは速やかにProMMP-3を活性化することを報告している。癌組織内でもこのようなプロテアーゼ間の相互作用を介した酵素の活性化機構の存在が推定される。そこで本年度は、194例のヒト大腸癌ホルマリン固体標本より薄切連続切片を作製し、MMP-9,MMP-3およびuPAの発現を免疫組織化学的および臨床病理学的に、さらにヌードマウス肝転移モデルの盲腸移植巣におけるMMP-3RNAの発現をin situ hybridization (ISH)にて検討した。。 1)MMP-3は腫瘍増殖先進部の炎症性細胞浸潤の強い部で発現がみれれたが、その発現は単球一マクロファージ、繊維芽細胞に限局し、発限細胞数は少数であった。1切片でのMMP-3の陽性症例率は約30%であったが、異った複数のブロックを用いて検討すると陽性率はブロック数に比例して増加した。肝転移モデルを用いたISHの検討では、MMP-3mRNAの発現は間質の単球一マクロファージを主体に高率に認められ、とくに肝転移例では全例陽性であった。 2)uPAは腫瘍細胞主体の発現を認め、陽性症例率は42%であった。陽性例での発現度は個々の症例で異り、腫瘍細胞の10%から90%であった。MMP-9発現との関係をみると、uPAはMMP-9とco-expressionする傾向を認めた。 昨年度に行った臨床病理学的検討により、MMP-9の発現は腫瘍進展に強く関与することが示され、その活性化機構として大腸癌組織では、腫瘍細胞に発現するuPAがplasminを活性化し、plasminは微量ではあるが比較的恒常的に発現するProMMP-3を活性化、MMP-3はProMMP-9を活性化する機構の存在が示唆された。
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