研究概要 |
1)大腸上皮性腫瘍におけるMMP-9の発現変化 MMP-9は単球-マクロファージ、好中球、繊維芽細胞などの間質の細胞と腫瘍細胞自身に発現した。MMP-9の発現率は正常腺管細胞→腺腫細胞→早期癌細胞→進行癌細胞と腫瘍の発生や進展に伴い高くなった。また、進行癌症例では、MMP-9発現と肝転移、壁浸達度あるいは組織学的分化度との相関が認められ、特に肝転移との強い関連がみられた。 2)大腸癌組織におけるMMP-9とTIMP-1産生の意義 ヒト大腸癌組織およびヌードマウス同所性移植肝転移モデルの盲腸移植巣におけるMMP-9とTIMP-1mRNAの発現をin situ hybridization(ISH)により検索し、腫瘍細胞と間質の細胞別に発現度と肝転移との関係を検討した結果、原発巣および移植巣の腫瘍細胞に産生される酵素MMP-9とインヒビターTIMP-1の量的バランスが肝転移に重要であることが示唆された。 3)大腸癌組織におけるMMP-3とu-PA発現 免疫染色によるMMP-3の発現は、腫瘍増殖先進部を主体に単球マクロファージ、繊維芽細胞に少数散在性に認められ、MMP-3はMMP-9とco-expressする傾向がみられた。肝転移モデルでは,MMP-3mRNAの発現は間質の単球系を主体に高率に認められ、とくに肝転移例では全例陽性であった。u-PAは腫瘍細胞主体に発現し、肝転移例や壁深達度が深い症例では有意に高率であり、腫瘍増殖先先進部でMMP-9とco-expressする傾向を認めた。 以上より、大腸癌組織に発現するMMP-9は腫瘍進展に深く関与することが示唆され、インヒビターとの産生バランスが腫瘍局所の酵素活性に重要であると思われた。大腸癌組織では、MMP-9にco-expressionされるu-PAがplasminogenを活性化、plasminは微量であるが局所の炎症などによって腫瘍増殖先進部に産生されるproMMP-3を活性化、MMP-3はproMMP-9を活性化する一連の活性化機構の存在が示唆された。
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