本研究では、小動物に対しICGクリアランスメーターによる非観血的なICG-k値の測定法を確立した。さらにアミノピリンクリアランス、アンチピリンクリアランスによる肝機能総量の測定法を確立した。一方、肝重量割合、DNA含量、組織のPCNA染色によるlabeling indexなどにより70%肝部分切除後の形態的な再生を評価した。その結果、肝部分切除後の肝再生の過程において細胞の分裂期に肝機能総量が最低になり、さらに肝臓の形態的再生に遅れて機能的な再生が起こることを明らかにした。また、肝細胞の分裂期以降の再生肝臓が多血状態であること示した。 本研究では、EGFにより肝部分切除後の肝再生を促進させ、somatostatinにより肝再生を遅延させた。しかし、70%肝部分切除では細胞増殖のドライブが強く、機能的再生状態が変化する程、形態的な再生状態を有意に変化させることは困難であった。今後はより強力な肝細胞の増殖因子や細胞増殖抑制因子の投与による検討や、再生過程が異なる50%あるいは90%肝部分切除での検討が重要であると考えられた。 また、肝部分切除後の栄養の投与による検討でも、形態的な肝再生や肝機能総量を明らかに変化させる程の影響は認められなかった。今後は、肝部分切除術後の栄養補助の基礎的な検討が必要と考えられた。さらに、わが国の原発性肝癌の大部分が肝硬変を中心とする慢性障害肝臓に発生していることより、肝硬変モデルなどの障害肝臓モデルの術後の肝機能不全の回避を目的とした機能的肝再生の経時的な検討が臨床的にもより重要であると考えられた。
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