研究概要 |
これまで予備実験として,初回灌流時の肺血管抵抗を標準UW液(K=140mM)および低カリウムUW液(K=20mM)で測定した.麻酔下,気管切開を行い4℃の冷却灌流液(100ml/kg body weight)を30cmの高さより、肺動脈に留置したカニューレより初回灌流を行った.その結果肺血管抵抗(PVR ; mmHg/ml/min)は標準UW液(K=140mM)でPVR=0.86±0.07(n=3),低カリウムUW液(K=20mM)でPVR=0.42±0.02^*(n=3)(^*p<0.05)と高カリウム低ナトリウムの細胞内液型組成の灌流液では強い血管収縮をきたすことが示された.さて実際の臨床においてはEuro-CollinsまたはUniversity of Wisconsin (UW)液などの細胞内液保存液による灌流時の血管収縮抑制を目的としてPGE1が使用されているが,その効果には疑問を持たされていた.そこで平成8年度では,当初の予定とは若干異なるが,定常流によるisolated rat lung perfusion modelを用いて,当初予定の4群(標準UW液(K=140mM),低カリウムUW液(K=20mM),標準UW液+Nifedipine,低カリウムUW液+Nifedipine)に加え標準UW液+PGE1という群も検討することとした.これまでに判明した研究結果は以下の通りである.1)通常の臨床使用量のPGE1では,高カリウムUW液による肺血管収縮を抑制しない.2)カルシウム拮抗薬Nifedipine(10^<-6>M)は高カリウムUW液による肺血管収縮を完全に抑制する. 今後作用機序をさらに検討するため,同様の実験モデルを用いて,caffeineあるいはrhianozineを用いた研究も追加する予定である.
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