虚血中におけるK^+の動態を検討し、Na^+-K^+ポンプ活性や外向きK^+電流が心筋虚血再灌流障害と関連性を有することを実験的に明らかにすることを目標としていた。 1.摘出潅流心を用いた実験(現有設備を使用) 現時点では灌流装置の安定性や、摘出灌流心のrun downの程度を明らかにしつつある。 2.電気生理学的検討や生化学的検討に関しては、実験開始前により明らかな方針を建てるため、臨床上の研究を先に行うことになった。常温の酸素加血液高K^+心筋保護液(OBC)投与中に、心筋へのK^+の取り込みと心筋からのNa^+の排出を示唆する所見が得られるかどうかを検討した。 成人開心術21例(冠動脈疾患11例、弁疾患10例)を対象とした。体外循環開始後、大動脈基部と冠静脈洞にカニューラを挿入しOBC液注入中に冠静脈洞液(CS液)を採取した。心筋保護液(cation組成:Na^+:145.3; K^+:33.2; Ca^<2+>:2.4; Mg^<2+>:22.6mEq/L)は注入直前に体外循環回路からの酸素加血液と1:1に混合された。心筋保護法はYoung氏液による心停止後、初回は18℃で15ml/kg(順行性:10;逆行性:5)、その後は18℃、7.5ml/kg(順行性:5;逆行性:2.5)を30分毎、最後に34°〜36℃のOBC液を5ml/kg(順行性)注入した。CS液はOBC液に比しK^+濃度と酸素飽和度が有意に低かった。個々の症例のOBC液-CS液間のK^+の濃度較差と酸素摂取率について回帰分析するとr=0.73の相関が得られた。Na^+の濃度較差およびK^+の濃度較差と、酸素摂取率を同時にプロットすると、心筋へのK^+の取り込みが増大する時の酸素摂取率では、心筋からのNa^+の排出が増大するような所見が得られた。
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