研究目的は幼若心筋細胞及び新生児期に生理的に多く存在する線維芽細胞(ともに新生仔ラット心筋より単離)を用いて、低酸素環境下で培養(アチノ-ゼ性心疾患の心筋モデルと考える)、次いで、低温、低酸素及び再潅流モデルを作成して、低温、低酸素及び再潅流による心筋細胞障害とそれにおよぼす線維芽細胞の心筋細胞保護作用について検討することである。現在まで、基礎実験として、あらかじめ設定した5%の低酸素環境が、実験を進めるに於て果して適当であるのかどうかを検討するめ、様々な培養酸素濃度を設定して検討を行ってきた。即ち、幼若心筋細胞を培養する際の酸素濃度を1%、2%、3%、5%、10%、21%(コントロール)で4日間培養し、心筋細胞の形態の変化、心筋細胞拍動数の推移を観察した。その結果3%以下の酸素濃度では培養開始48時間以内に明かな細胞形態の変化及び拍動数の低下がみられ(低酸素による細胞障害の発生)、10%ではコントロールに比して差は認められなかった。しかし、5%でコントロールに比して拍動数では殆ど差はみられなかったが、細胞形態上は良好に保たれていた。現時点では5%或は10%酸素濃度のどちらが適当な低酸素環境であるかを決定することはできないが、少なくとも5%、10%両者での状況で実験を進める必要があると考えられる。
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