開心術後の患者11例で検討を行った。内訳は、僧帽弁置換術4例、大動脈弁置換術4例、2弁置換術3例であった。平均年齢は56歳、男女比は8対3であった。体外循環時間は174±22分、大動脈遮断時間は104±17分、術中最低直腸温は24.7±1.8℃であった。胃粘膜pH (pHi)の測定はトノメーター(Tonometrics社)を胃内に挿入して行い、肝静脈血酸素飽和度(S_<HV>O_2)測定のためには術前日透視下にカテーテルを右または中肝静脈に留置した。集中治療室(ICU)入室後の心係数(Cl)は4.8±1.6L/min/m^2、混合静脈血酸素飽和度(SvO_2)は75.3±7.9%と心機能は両校に維持されていた。ICU入室時のS_<HV>O_2は7.19±0.08と低く、pHiも50%以下であった。入室12時間後では、pHiは7.31±0.05と有意に(p<0.01)上昇し、S_<HV>O_2は56.7±13.7%と上昇傾向にあった。入室24時間後では心機能には変化がなかったが、pHiは7.38±0.05と有意に(p<0.05)改善して正常範囲となり、S_<HV>O_2は63.2±5.2%となった。SvO_2とS_<HV>O_2の差は、ICU入室時は17.0±5.5%、24時間後は、8.9±8.1%と縮小傾向にあった。開心術後は心拍出量、SvO_2が良好に維持されていたが、S_<HV>O_2及びpHiは低値であった。このことから、開心術後には体外循環の影響による消化管領域の血流の低下が続いており、血流のmaldistributionが予想される。その改善には12から24時間を要すると思われた。S_<HV>O_2及びpHiは消化管領域の血流の評価に有用と考えられた。
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