研究概要 |
体外循環後の消化管領域の循環動態に関して26症例で検討した。症例を術後低心拍出量(LOS)群5例と非LOS群21例に分けた.疾患の内訳は、LOS群で大動脈弁置換(AVR)2例,僧帽弁置換術(MVR)1例、AVR+MVR2例,非LOS群でCABG9例,MVR6例,AVR3例,AVR+MVR3例であった.平均年齢はLOS群が65歳,非LOS群が57歳であった.体外循環時間は各々252±43分,189±9分,大動脈遮断時間は各々150±22分、105±6分であった。胃粘膜pH(pHi)の測定はトノメーター(Tonometrics社)を胃内に挿入して行い、肝静脈血酸素飽和度(S_<HV>O_2)測定のためには術前日透視下にカテーテルを右または中肝静脈に留置した。集中治療室(ICU)入室後の心係数(CI)はLOS群が3.3±0.4L/min/m^2と非LOS群の4.6±0.4と低い傾向にあり,術後24時間においても同様であった.S_<HV>O_2は入室24時間後までの間,LOS群が非LOS群と比べて有意に低値をとった.pHiは両群ともに術後24時間までに正常域まで回復した.体外循環後の消化管粘膜の血流は,心拍出量が維持されていても低下しており,この血流異常分布は術後24時間以内に改善した.肝血流はLOS群で低く低心拍出状態は肝血流低下で代償されていた.LOS群では5例中4例が死亡しており、肝静脈血分析は消化管領域の血流評価のみならず予後を反映する指標となりうると考えられた.
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