本研究の目的は、basic fibroblast growth factor (以下b-FGF)の局所投与による冠状動脈間、および他臓器ないし他組織の動脈と冠状動脈との間の側副血行新生である。 実験1:雑種成犬10頭での冠状動脈閉塞による急性虚血モデルで、b-FGF 10μg、240μgおよび300μgをヘパリン3mgと混和して局所注入したが、明らかな側副血行形成はみられなかった。さらにニホンザルで同様の実験を2頭に行ったが、やはり明らかな側副血行形成はみられなかった。 実験2:雑種成犬11頭で、で、人工心肺使用下および非使用下に左内胸動脈を左前下行枝に心拍動下に吻合した。吻合の近位部に虚血域を作成し、その上に内胸動脈を固定して側副血行の作成の有無を調べた。4頭が早期死亡し、7頭で摘出心での造影を行った。いずれもグラフトは開存していた。単に固定した症例2例、フィブリン糊で固定しただけの症例3例、b-FGF 300μgをフィブリン糊に混和して固定した症例2例とも、側副血行は形成されておらず、心筋梗塞ができていた。 実験3:雑種成犬10頭で、同様に左内胸動脈を左前下行枝に心拍動下に吻合した。吻合の遠位の冠動脈に二重結紮で閉塞segmentを作成し、内胸動脈からb-FGF 50μgにヘパリン0.5ml混和したものを動注して側副血行作成の有無を調べた。4頭が早期死亡し、6頭で摘出心での造影を行った。1例がグラフト閉塞。しかし、いずれも著明な側副血行増正はみられなかった。
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