近年、癌化やその増殖転移と遺伝子・DNAレベルでの異常との関連が注目され、臨床的意義や臨床応用についても検討が進められているが、染色体・遺伝子の異常(染色体の数や形態、構造の変異)に関しては、まだ十分な知見が得られていない。そこでFISH(fuluoresent in situ hybridization)を用いて遺伝子異常の解析を行なうとともに、臨床応用への可能性についても評価することを目的とした。 12例の原発性肺癌の新鮮標本に対するFISHによる検討において、17番染色体では5例(42%)に染色体の数的異常が出現した。これら5例の臨床病期はIIIA期4例、IV期1例といずれも進行肺癌であった。一方、I期例の6例ではいずれも染色体の数的異常を認めなかった。よってFISHを用いることにより原発性肺癌のステージと染色体・遺伝子異常との関連性の解析につながると考えられた。 当初は原発性肺癌のパラフィン包埋ブロックも材料として、FISHによる解析を行う予定であった。しかし、新鮮標本では上記のごとく、ある程度の結果が得られたが、パラフィン包埋ブロックの細胞からは未だ十分な結果が得られていない。パラフィン包埋ブロックの場合、すでに予後のわかった症例も多数あり、これらの症例に対して、FISHの方法がうまく作動すれば、その結果より染色体・遺伝子異常と肺癌の予後との関連性が得られる可能性もあり、早急に手法を確立させたいと考えている。
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